1/1. 昨日まであんなに暑かったのに。一人、文句を言いながら、身支度をすすめる。秋仕様のコートを引っ張り出す暇はなく、面倒くさがって出しっぱなしにしていた春物のコートに袖を通した。 ちょっと無理やりすぎたかな。色合いは、丈は、防寒具合は。 そんなとりとめもない思考は着信音に遮られた。 抑えても跳ねる心臓。この気持ちの初々しさだけは誰にも負けない。受話器からは君の声がした。 「待った？」 「今来たところです」 思わず笑っちゃうようなテンプレ会話、 「急に寒くなりましたね」 「なんだか雨も降りだしそうだね」 ありきたりな天気の話、 「また冷たくなってますね」 握られた手の温度、 「少し、歩きますか」 いつもの台詞なのに、 心臓は早鐘を打って、とたんに春物のコートを着てきてしまったことが気になり出す。 銀杏並木が色づいていつもの散歩道に彩りを添えていた。今日は生憎の曇り空だけど、次のお休みには秋晴れの空に映える紅葉を二人でのんびり眺めに行きたいなぁ、なんて思っていたら、 「今度、紅葉狩りにでも行きますか」 「行く」 それまでに衣替えはしておくね。 [select] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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