探偵羊の観る夢は
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息を吐くように、幸せな夢を欲しがった。




(探偵)(羊の観る夢は)




それは残酷な嘘だった。たった一度の些細なミスで君の命を奪おうとした。エル、あなたに庇われてしまって、もう私は何もできない。

「私のせいです」

そんなに脆くみえただろうか。銃声が撃ち抜いたのは決して私の心などではなく、それは、それは間違いなく君の一部だった。

「もう少しはやく辿り着いていれば、あるいは」

あるいはなんだっていうの。慰めの言葉が滑り落ちていく。私という人間はあなたが思っているよりもずっと、冷たく頑なで驚くほどに身勝手だった。

「あるいは彼も意識を」
「帰る」

真っ白な部屋に響く規則的な音からも、私を甘やかすエルの言葉からも逃げ出したかった。

でも、どこにいけばいいの?

「いえ、私が帰ります」

溜め息が漏れる。いつだってあなたは不器用だ。特に引き留めることもなく、諦めにも似た気持ちをもって椅子に座り直した。

「……………」

白は、君の色だったね。

「………………………」

沈黙は、君の特技だったね。

「………………」

眠るのは、私の方が得意だったのに。

「…………………………………」

規則的な音は耳に残る記憶を引き戻す。君も、逝ってしまうの?

制止も聞かずに乗り込んだ。銃声は高らかだった。犯罪者は勝ち誇った。私に向けられた、銃口。君の色が染まっていく。

ありきたりだろうか。わかっている。いや、わかっていたかった。でも君と彼は優秀過ぎて。私は、

「…………」



せめて、目覚めるまでの君の夢が幸せなものであるように、祈ることしかできなかった。



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